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コロナ急落を受けて

2020年4月10日

一向に収束の目途がたたない新型コロナウィルス。日本のみならず、ニューヨーク市場の大幅な下落に不安を感じた方は少なくないでしょう。アメリカは、当初遠いアジアで起きた対岸の火事程度に思っていたコロナ騒動が米国にも飛び火したとの認識で、3月5日から急落が始まり、昨夜は原油の急落も相まって2013ドルの大暴落を演じました。

某局のワイドショーでは、経済の専門家ではないコメンテーターが「今回の暴落はリーマンショックに似ている。この下落がきっかけで世界経済は大変なことになるだろう…」と根拠のない無責任な発言を繰り返しています。これを聞く一般の人は信じてしまうかもしれませんが、はっきり申し上げて『今回のコロナ騒動とリーマンショックは全く異なるもので、私はこれがきっかけで世界経済が2008-10年のような世界金融危機に陥ることはない』と考えていますが、正直、いつ終息するかわからない状況です、いつかは必ず収束すると考えていますが、終息が長引くほど景気には悪い影響を与えてしまいます。
このような時こそ冷静になって考えてみる必要があるのではないでしょうか

 ~リーマンショックとは根本的に異なる理由~

NYダウ平均株価指数は、2月11日の高値、29,551ドルから1か月で30%近い下落に見舞われました。まだまだ調整局面の途上にあるとみるべきですが、いずれにせよ2008年のリーマンショック、2001年のITバブル崩壊、1987年のブラックマンデーと肩を並べる暴落イベントとして名を残すことは間違いないでしょう。しかしながら一部のメディアが指摘するように、今回のコロナショックがリーマン危機に匹敵する規模に拡大するかというと、そうはならないというのが私の考えです。その根拠を説明させていただきます。

メディアの悲観バイアス報道

今回の報道に限ったことではありませんが、メディアの報道姿勢には悲観バイアスがかかっているので注意が必要です。メディアも商品の一つなので陳列棚で人の目を引く必要があります。例えば、株式市場が下落した13日の報道で、NYダウ史上最大の下落幅「2352ドル」と表現されることが多いのですが、下落の大きさを過去と比較する目的ならば本来は下落率「9.9%」を用いるべきです。しかし、下落率という表現を使うとなると、1987年のブラックマンデーでは、NYダウ平均は一日で「22.6%」下落しているものですから、今回は「歴史上最大の下げ」というインパクトの効くコピーは使えなくなってしまいます。

もう一つ、日本の年金に関する報道でも「率」ではなく「額」で報道されているのをお気づきでしょうか?平成27年度(2015年)、日本の厚生年金は運用で「11兆円」の赤字を出したと大々的に報道されました。我々国民の老後のお金を11兆円も減らしやがって…という論調です。しかし、これも「率」に置き換えると僅かに「▲3.8%」に過ぎず、ニュースとしてはインパクトが弱いですね。(データ出所)GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)のHP

それに、日本の厚生年金の運用は、2001年から年率平均では「+3.23%」の収益を上げていますが、そうしたことは大きく報道されることなく、損した時だけここぞとばかりに年金運用を叩きます。老後2000円問題が過熱した時もそうでしたが、話題の56ページからなる報告書には、「長期・分散・積立」という国民が知っておくべきキーワードが29回も登場するのですが、それを取り上げるメディアは一つもなく、56ページのなかで僅か1回だけ登場する「2000万円」という数字だけを切り取って、あれだけ世間を騒がせました。メディア的には大成功というわけです。

資産デフレ型ショックではない

さて、話を戻しましょう。私は、今回のコロナショックはリーマンショックや平成バブルの崩壊というよりは、ブラックマンデー、米国同時多発テロ、英国EU離脱ショックに「質的に」近いと考えておりますので、感染に終息の兆しが見えてくれば市場の回復は早いものになると思っています。

これまで世界の株式市場の歴史を振り返ると、暴落の谷が深く、回復までに長期の時間を要するケースといのは、家計部門・企業部門・金融機関においてバランスシートが壊れた場合に生じています。バランスシートが壊れるというのは、例えば家計の場合、銀行から1億円借りて不動産を購入したケースで説明します。当初は、1億円の「負債」の対して1億円の「資産」と均衡していますが、何らかのショックが発生して不動産価格が下落(資産デフレ)すると、例えば、1億円の「負債」に対して7000万円の「資産」になる状況です。こうした状況が生じますと家計であれば「消費を抑制」、企業であれば「設備投資を抑制」、金融機関であれば「貸出の抑制」といったように経済は一気に収縮を始めます。これが資産デフレ型の恐慌で、谷が深く回復までには相当の時間が必要となります。なぜならバランスシートが改善するまでには長い時間を要するからです。このタイプが、リーマンショックであり、平成バブルの崩壊にあたります。

それでは皆さん、今回、私たち家計のバランスシートは壊れていますか?企業、金融機関は?そうですね、バランスシートは壊れていませんね。したがって、コロナウィルスの終息宣言が出ればですが、経済回復は早いものになる可能性が高いと思われます。終息宣言の発令時期によって、今回の調整がいつまで続くかは微妙なところがあるかと思いますが、発令時期が早ければ早いほど市場の回復も早くなるでしょう。発令までに1年を要するなどとなると、そのまま世界的な景気後退につながる可能性が出てくるでしょうが、仮にそうなったとしてもリーマンショックほど長い(全治5年間)ものにはならないではないかと思います。バランスシートが壊れてさえいなければ、需要は健在ですから(消費能力がある)、供給(サプライチェーン)の復活によって経済は好転してくるはずです。

言い忘れていましたが、ブラックマンデー、同時多発テロ、英国EU離脱ショックでは、思いのほか短期的に市場は回復を遂げています。資産デフレ型の暴落でない限り、市場は短くて数か月、長くて2‐3年で暴落前高値回復しています。

いずれ人類がウィルスに勝つのであれば・・・

人類が最も恐れた感染症といえば、天然痘、コレラ、ペスト、…、と挙げればきりがありませんが、いずれも最終的には人類が克服してきました。未だに完全制圧できていない結核は、2016年のデータで感染者が1040万人、「死亡者が170万人」だそうです。死亡者のほとんどが低・中所得国におけるものとはいえ、今回のコロナウィルスに比べたら桁が違います。新型コロナウィルスは発症者の80%が軽症、死亡率は2-3%程度です。天然痘のように完全制圧できるのか、それとも結核のように共存するなかで効果的な治療方法を探るのか、今のところどちらになるのかは断定することはできませんが、人類の文明がコロナウィルスで滅んでしまうと考えるのも現実的ではないと思います。

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